マーケティング3・0
従来マーケティングは、「製品管理」、「顧客管理」、「ブランド管理」といった、3つの大きな柱を軸に発展してきた。
「製品管理」
戦後のモノのない時代には、いかに効率良く製品をつくり出して「売る」かが焦点となっていた。ここでは、第2章で述べた「戦術的マーケティング(マーケティングミックス)」が中心であった。いわゆる取引志向の「マーケティング1・0」の時代である。
「顧客管理」
経済が成長し、モノがあふれ始めると、顧客の需要を読み解き、いかに「買ってもらう」かが焦点となった。ここでは、第2章で述べた「戦略的マーケティング(STP)」などの考え方が導入された。戦略(STP)を策定して、それを戦術(マーケティングミックス)へと展開する重要性が問われた。
「ブランド管理」
コンピューターが普及し、インターネットが誕生したことで、情報の伝達が容易になった。するとマーケティングでは、いかに顧客のハートをつかむかが焦点となった。「エモーショナル・マーケティング」、「経験価値マーケティング」、「ブランド資産価値」などの、新しいコンセプトが導入された。いわゆる関係志向の「マーケティング2・0」の時代である。
従来のマーケティングでは、セグメンテーションをおこない、ターゲットを絞り込み、ポジショニングを定め、4P(マーケティングミックス)を提供して、製品を中心にブランドを構築する。この従来の流れは、今後も意味を持ち続けるであろうし、引き続き必要な取り組みである。しかし、グローバル化とソーシャル・ネットワークの普及で、ビジネス環境は、今までのマーケティングの変革期同様に、大きなターニングポイントにきていることも確かである。
本物がわかるようになった消費者は、「より深いつながり」を求め、グローバル化した世界を、「よりよい場所にしたいという思い」を共有し始めた。そして、自分たちの不安に対するソリューションを求め始めたのだ。今や消費者を、製品・サービスを消費する人たちとしてとらえるのではなく、ひとりの人間としてとらえる必要がでてきた。これは取引先や従業員についても同様である。意識している、していないに関わらず、混乱の世の中において、自分たちの一番深いところにある欲求(社会的、経済的、環境的公正さ)に、ミッション、ビジョン、価値で対応しようとしている企業を探しているのだ。
マーケティング3・0では、世界に貢献することを目指している人たちに対して、「精神に訴えるマーケティング」が重要であると説いている。マーケティングの神様が、精神性が重要だと提唱しているところに注目して欲しい。
中小企業診断士 山口亨(やまぐちすすむ)