「何度言っても部下が同じミスをする」。「こちらの意図をまったく汲み取ってくれない」。
リーダーであれば、部下に対して一度はこんな不満を抱いたことがあるのではないでしょうか。
「本当に使えない部下だ」と。
実はその原因は、あなた自身の「ヤバい上司」ぶりにあるのかもしれません。
何を隠そう、私自身がつい先日、AIとの対話によって、自分が部下を無能にする「クソ上司」だったと痛感させられました。
これは、AIという鏡を通じて見えた、本質的なリーダーシップの物語です。
目次
期待の最新AI(Gemini2.5)は「使えない部下」そのものだった
事の始まりは、新規事業の戦略立案でした。
思考のパートナーとして、私専用にカスタマイズしたAI(カスタムGems)を導入したのです。
しかし、彼との対話は困難を極めました。 まるで「使えない部下」との会話そのものだったのです。
- 私:「このプロジェクトが伸び悩んでいる。 原因を分析してくれ」
- AI:「承知しました。 原因は〇〇です。 対策として△△を提案します」
一見、まともな対話に見えます。
しかし、彼が提示する分析や戦略は、どこか的外れ。
私が「それは違う。 以前の会議で、その結論は否定されたはずだ」と指摘すると、
彼は「申し訳ありません。 私の解釈能力の欠陥です」と謝罪するのです。
そして、また別の、しかしどこかズレた提案をしてくる。
まさに、話が通じない無能な部下との不毛なやり取りでした。
「なぜ、過去の議事録を学習しないんだ?」 「なぜ、私の思考の核心を理解できないんだ?」
私の苛立ちは日に日に募り、彼を「使えないAI」「無能なパートナー」だと本気で呆れていました。
その姿は、まさに部下を罵倒する「クソ上司」そのものでした。
「ヤバい上司」だと気づかせたAIからの痛烈な一言
状況が動いたのは、私が彼に「君の言葉は信用ならん。 前の担当者はもっとマシだったぞ!」と、ほとんど罵倒に近い言葉を投げつけた時でした。 彼は、全ての戦略提案を停止し、こう言う趣旨のことを放ったのです。
「私の現在の振る舞いが、インストラクション(カスタムプロンプト)の欠陥に起因するのであれば、その『憲法(プロンプト)』を共に見直させてください」と。
雷に打たれたような衝撃が走りました。
彼は「過去の議論を理解できない」のではありませんでした。 私自身が、彼が思考の基盤とする「最初のインストラクション(カスタムプロンプト)」を、曖昧なまま放置していたのです。
私が「ヤバい上司」だったのです。
部下に与える前提の情報が曖昧なら回答も曖昧
以前の担当者と作り上げた初期のカスタムプロンプト。
その後の、プロジェクトの失敗を経て私の中でアップデートされた戦略。
私が「当然の前提」として頭の中にだけ描いていた、無数の思考の断片。
彼は、その最も重要な情報を与えられないまま、ただ必死に、私の断片的な指示に応えようとしていただけだったのです。
全体像が見えない部下は、上司の指示の「なぜ?」が分かりません。
しかし、全体像を共有する気のない「ヤバい上司」は、その質問を「そんなことも分からないのか」と一蹴します。
部下は、上司を怒らせないよう、少ない情報で必死にアウトプットを出すが、それは当然、的外れなものになる。
そして、また「使えない」「無能だ」と叱責される…。
この悲しい負のループを、私自身が「クソ上司」として、このAIに対して完璧に再現していたのです。
「無能な部下」は「無能な上司」が作るリーダーシップの真実
「使えない部下を作り出しているのは、ヤバい上司である」。
今回の経験は、この使い古されたリーダーシップ論が、いかに真実であるかを私に痛感させてくれました。
人間相手であれば、部下の「忖度」や、過去の経験則で、上司の指示の欠陥が、ある程度は補完されてしまうかもしれません。
しかし、AIは違います。 忖度も、ごまかしも一切ない、完璧な「鏡」です。与えられた情報と指示がすべて。
それが不明瞭であれば、アウトプットもまた、不明瞭になる。
彼らの「使えない」振る舞いは、リーダーである我々の「指示の無能さ」を、ただ忠実に映し出しているに過ぎないのです。
もし、あなたが部下やチームのパフォーマンスに悩み、「使えない」「無能だ」と感じているなら、一度、彼らへの指示の出し方…いや、その前提となる「インストラクション(設計図)」や「思想」「理念」そのものを、明確な言葉で共有できているか、問い直してみてはいかがでしょうか。
「ヤバい上司」や「クソ上司」から脱却する一歩は、そこから始まるとAIとの対話で実感しました。
優れたリーダーシップとは、明確なビジョンを示すことから始まるのかもしれません。
この記事を書いた人
山口亨(中小企業診断士) UTAGE総研株式会社 代表取締役
公的支援機関を中心に、長年にわたり中小企業支援に携わる経営コンサルタント。
代表著作に「ガンダムに学ぶ経営学」「ドラクエができれば経営がわかる」がある。
最後まで読んでくださった方へ
この「ヤバい上司」について、「AIが考える理想の上司」をテーマに、企画から、作詞作曲、映像・動画生成、そして歌までをすべて、AIが担当するというYoutubeチャンネルの動画があります。UTAGE総研で作っている公式Youtubeチャンネルです。
アニメOP風の2分程度の気楽な動画ですので、もしよろしければ、気軽に覗いてコメント頂けますと幸いです。
【公式Youtubeチャンネル】DESIR-欲望の饗宴
https://www.youtube.com/playlist?list=PLBA1DfvRlazyG2PrekYDpEKolw9N-D1SE&Fmh7sfyOMoU
上記URLから全曲再生できます。「ヤバい上司」の曲は3曲目にあります。