規模の経済とは、生産量が増えるほど一単位あたりのコストが下がる経済原則です。
大量生産が可能な大企業ほど、この恩恵を受けやすく、結果として低価格で商品を提供できます。
例えば、自動車業界では、一つの工場で大量の車を生産することで、設備投資や開発費を効率的に分散させることができます。
そのため、大企業が支配する市場では中小企業が価格競争で勝負することが非常に困難になります。
目次
中小企業は規模の経済とどう向き合うべきか?
大企業は大量に仕入れ、大量に生産することでコストを下げ、低価格で商品を提供できます。
この「規模の経済」が働く市場では、中小企業は価格競争で勝負しにくくなります。
では、中小企業はどのような戦略を取るべきなのでしょうか?
大企業と同じ土俵で戦うのは危険
仮に中小企業が大企業と同じ価格で商品を提供しようとすれば、原価の違いから利益率が大幅に下がります。
結果として、自社の経営が厳しくなり、長期的な存続が困難になります。
そのため、価格勝負ではなく、異なる戦略を取る必要があります。
大企業が入りにくい領域で勝負する
大企業は規模の経済を活かせる市場に集中します。
そこで中小企業は、多品種少量生産や希少性のある商品・サービスを強みにすることで、大企業が簡単には参入できない市場を狙うべきです。
規模の経済が働く市場では不利になる理由
規模の経済が強く働く市場では、大量生産によってコストが下がり、大企業が圧倒的に有利になります。
これは国際市場でも同様で、例えばGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)はクラウドサービスを低コストで提供することで市場を独占しています。
日本国内ではトヨタが規模の経済を最大限に活かして成功している企業の一例です。
中小企業の成功事例
中小企業が生き残るためには、多品種少量生産や希少性を活かしたビジネスモデルが重要です。
例えば、職人技が必要な工芸品や、特定のニーズに特化した製品は、大企業が参入しにくい領域です。
また、特定のニッチ市場で海外展開を目指す「グローバルニッチ」戦略も有効です。
中小企業が取るべき具体的な戦略
- 自社の強みを明確にする
何が競争優位につながるのかを分析し、規模の経済が効きにくい分野に集中する。 - 多品種少量生産を活かす
大企業が対応しにくいオーダーメイド製品やカスタマイズサービスを提供する。 - 希少性を武器にする
特定の地域や文化に根付いた製品を作り、独自性を打ち出す。 - グローバルニッチ市場を狙う
国内市場に限らず、海外の特定市場にアプローチすることで、大企業との競争を避ける。
最後に:中小企業は戦略的に動くべき
中小企業が生き残るためには、自社の強みを最大限に活かし、大企業が簡単に対応できない分野にフォーカスすることが重要です。当たり前といえば当たり前のことです。でも結局はそれにつきます。
そのためには、客観的に自社の特徴を把握し、USP(Unique Selling Proposition:独自の売り)を明確にし、それを軸に戦略的に事業を展開することが求められます。
そうは言っても、自社だけでは難しいし、コンサルに払う費用もない場合は、無料で利用できる中小企業支援機関のアドバイスを受けるのも一つの手です。
専門家の視点から自社の強みを再確認し、適切な戦略を立てることで、持続可能な成長を実現しましょう。
この記事を書いた人
山口亨(中小企業診断士) UTAGE総研株式会社 代表取締役
公的支援機関を中心に、長年にわたり中小企業支援に携わる経営コンサルタント。
代表著作に「ガンダムに学ぶ経営学」「ドラクエができれば経営がわかる」がある。