「AIでイメージ通りの画像を生成したい!」多くの人がそう思って、AI画像生成ツールを試しています。
しかし、この技術は単なる魔法ではありません。
その面白さ、現状の能力、そして利用する上で知っておくべき権利問題とリスクを低減する方法について解説します。
目次
AI画像生成の現状:得意なことと苦手なこと
AI画像生成は日々進化していますが、万能ではありません。
AIが比較的得意なこと:
- 一般的なモチーフや雰囲気の表現: 風景、動物、一般的な物体、特定の感情や雰囲気(例:サイバーパンク、ファンタジー)など。
- 特定の画風の模倣: プロンプトで画風を明確に指定することで、その特徴をある程度再現できます。(例:「油絵風」「水彩画風」)
- 迅速なアイデア出し: 大量のバリエーションを短時間で生成し、インスピレーションを得るのに役立ちます。
AIが苦手なこと(現状の限界):
- 細かな指示への正確な対応: 「40歳くらいの顔」「特定の位置に特定のオブジェクトを配置」といった詳細な指示は、現在のAIでは完全にコントロールすることが難しいです。
- 複雑な概念の表現: 「アンダーグラウンドだが芯はしっかりしていて正義感が強い」といった内面的な特徴や、相反する要素(活気とダークさの共存)を繊細に表現するのは難しい場合があります。
- 複数要素の一貫性維持: 多くの要素を盛り込むほど、それぞれの要素が意図せず干渉し合い、全体の一貫性や自然さが失われることがあります。
- 特定の著作物の「風」のニュアンス: 「〇〇風」は可能でも、その「風」の範囲が非常に広く、ユーザーの意図する具体的な「風」のニュアンスを完全に捉えるのは難しいです。
AI画像生成の権利問題とリスク、そして回避策
AI生成画像を利用する上で、最も重要なのが権利問題です。
特に商用利用を考える場合は、以下の点を深く理解しておく必要があります。
1. 著作権の「グレーゾーン」
現在の法律では、AIが自律的に生成した画像に著作権法上の保護が与えられるかは、まだ明確な答えが出ていません。
多くの国では「人間の創作性」が著作権の要件とされており、AIのみで生成されたものには著作権が認められない可能性が高いとされています。
- ユーザーの責任: AIサービス提供者は、生成された画像の著作権はユーザーに帰属するとする一方で、その利用における法的な責任はユーザーにあるとしています。
つまり、もし問題が発生した場合、最終的な責任は画像を生成・利用した側にあります。
2. 著作権侵害のリスク
AIは膨大なデータを学習していますが、その中には著作権保護された画像も含まれています。
そのため、意図せず既存の著作物に似た画像が生成されてしまうリスクがあります。
- 具体的なリスク: 特定のキャラクター、ブランドロゴ、著名なアート作品、写真の構図などに酷似した画像が生成され、それを商用利用した場合、著作権侵害や肖像権・パブリシティ権の侵害となる可能性があります。
特定の作品やキャラクターの「ような」スタイルを要求すると、このリスクは高まります。
3. リスクを低減するための対処法
AI生成画像を安全に利用するために、以下の点に留意しましょう。
- 特定の著作物・人物を避ける:
- 特定のキャラクター名、ブランド名、有名人、アニメ・映画のタイトルなどを直接プロンプトに入れないようにしましょう。
- 「〇〇風」という表現も、特定の著作権保護されたスタイルに酷似するリスクがあるため、慎重に使うか、より抽象的な表現(例:「水彩画風」「レトロな雰囲気」)に留めましょう。
- 自然物や汎用的なモチーフを選ぶ:
- 風景、一般的な植物や動物、抽象的なパターン、汎用的なオブジェクトなどは、著作権侵害のリスクが比較的低いです。
- 生成画像の徹底的な確認:
- 生成された画像が、既存の作品や人物に酷似していないかを必ず目視で確認しましょう。
少しでも疑わしい場合は、使用を避けるか、大幅に修正すべきです。
- 生成された画像が、既存の作品や人物に酷似していないかを必ず目視で確認しましょう。
- 人間による加筆・修正:
- 生成された画像をそのまま使用せず、デザイナーなど人間が大幅な修正や加工を加えることで、人間の創作性を付加し、著作物としての保護を受けやすくなる可能性があります。
- 利用規約の確認:
- 利用するAI画像生成サービスの最新の利用規約を必ず確認し、商用利用が許可されているか、どのような制限があるかなどを理解しましょう。
- 専門家への相談:
- 不安な点がある場合や、大規模な商用利用を検討している場合は、必ず弁護士や弁理士などの著作権専門家に相談することをお勧めします。
まとめ:AIは「共同制作者」への第一歩
AI画像生成は、アイデア出しや表現の幅を広げる強力なツールです。
しかし、それは魔法ではなく、あくまでユーザーの指示に基づき画像を「生成」するツールであるという現実を理解することが重要です。
特に商用利用を考える際には、著作権や肖像権といった法的リスクを十分に認識し、慎重な対応が求められます。
AIは、完璧な「クリエイター」ではなく、私たち人間の「共同制作者」として、その特性を理解し、適切に活用していくことが、これからのデジタルクリエイティブの鍵となるでしょう。
この記事を書いた人
山口亨(中小企業診断士) UTAGE総研株式会社 代表取締役
公的支援機関を中心に、長年にわたり中小企業支援に携わる経営コンサルタント。
代表著作に「ガンダムに学ぶ経営学」「ドラクエができれば経営がわかる」がある。