最近のSNSを見ていると、まるで「劇場」だ。
一方は、現職の政治家が妻と公開の場で激しい夫婦喧嘩を繰り広げ、離婚の二文字まで飛び交う。
もう一方は、若手ベンチャーの社長が、信金から受けた「2000万円の融資」という日常的な事実を、「資金調達に成功!」と大々的にプレスリリースして失笑を買っている。
普通の人々はこれを見て「家でやれよ」「恥ずかしくないのか」と笑っている。
しかし、視点を変えると極めて重要な思惑がチラ見される。
彼らは、極めて冷徹な「経営判断」として、あえてピエロを演じていると思われるからだ。
目次
SNSの「劇場」を単なる痴話喧嘩や失笑で終わらせていないか?
世間を騒がせる炎上や不可解な行動の裏には、往々にして計算された戦略が隠されている。
1. 政治家夫妻の「離婚プロレス」という高度な演出と票読み
政治家が、LINEやDMで済む話をあえてX(旧Twitter)で晒す。これが何を意味するか。
これは、「どん底からの再生」を狙った、選挙に向けた壮大なギャップ戦略じゃないか。
一度、私生活の泥沼をさらけ出し、支持者の感情を「怒り」や「失望」で揺さぶる。
その後、あるタイミングで「心を入れ替えた」体裁を作り、再起を図る。
どん底を知る人間の「反省」は、一般大衆の心に深く刺さる。
彼らは私生活を切り売りすることで、数億円規模の税金が動く「議席」という実利を掠め取ろうとしているとも思えるのだ。
これを「ただの痴話喧嘩」と見るか、「高度な票読み」と見るかで、経営者としての資質が問われる。
2. 「2000万融資」を笑わせて拡散させる、計算された採用ハック
「単なる信金の融資でクソワロタw」 そう揶揄され、インフルエンサーに晒される若手社長。
だが、彼の狙いは「専門家からの評価」ではない。「認知」と「採用」だ。
大衆に笑わせ、拡散させることで、普段なら多額の広告費をかけても届かない層にまで情報をリーチさせる。
そして、そのリリースの末尾には、必ず「採用情報」が鎮座している。
「泥臭くても、バカにされても、本気で事業を伸ばしたい若手」を一本釣りするための、これは計算された「ツッコミ待ち」の罠だと思われるのだ。
なぜ彼らは自分の「信用」を担保に数字を買い叩くのか
彼らは共通して、自分の「信用」や「品格」を担保に入れ、短期的な「数字(認知)」を買い叩いている。
これは一つの「覚悟」の形だ。今の時代、数字という説得力がなければ、どんなに正しい理論も存在しないのと同じだからだ。

AI時代、あなたは「どの劇」に出演するのか?
今の時代、正論を吐くだけでは誰の目にも留まらない。
だからこそ、彼らは「信用」を切り売りしてでも、まずは数字という名の「土俵」に立とうとする。
だが、ここで一つ、冷静に自問自答すべきことがある。
あなたも同じようにピエロを演じる必要があるのか、ということだ。
SNSという巨大な劇場には、出演者だけでなく、その劇を冷静に観察する「客席」が存在する。
騒がしい舞台の上で注目を浴びる戦略も一つだが、一方で、その劇の裏側にある「構造」を冷徹に見抜き、リスクを断言する立ち位置もある。
大衆が演者に目を奪われ、一緒になって笑ったり怒ったりしている間に、その裏で進行する「生存戦略」の真実に気づけるか。
結論:構造を見抜くか、大衆と同じように笑うか
表面的な現象に一喜一憂している間に、水面下では残酷なほど合理的な戦略が実行されている。
彼らの「劇」をただのエンタメとして消費する側で終わるのか。
それとも、その裏にある冷徹なロジックを読み解き、自分自身のビジネスにおける「確固たる生存戦略」を構築するのか。
情報の濁流に飲み込まれるAI時代。 その答えの差が、数年後の経営の明暗を分けることになる。
この記事を書いた人
山口亨(中小企業診断士) UTAGE総研株式会社 代表取締役
公的支援機関を中心に、長年にわたり中小企業支援に携わる経営コンサルタント。
代表著作に「ガンダムに学ぶ経営学」「ドラクエができれば経営がわかる」がある。









